哲学的ツンデレ

別にあんたに恋したわけじゃないんだからね!
好きなのは「私が想像したあんた」なんだから!


実態の分からないものにだって恋することができる
それは人の想像力が持つ、恐るべき力で
たとえば、卒業以来会っていない中学校の同級生とよく似た人を見た
それでなんとなく思い出して、メールを送ってみた
この時点で主人公は、既に恋をしていたりする。


人はみな自分の人生を執筆する。
「あなたは自由なの!」「これが俺の物語だ!」みたいな格好悪い意味じゃなく
出来事(物自体)と記憶(認識)は別のもので
記憶は恣意的に書きつけられるものって意味です。


だから小説は、出来事を描写するうえで根本的な欠陥を抱えている。
だって既に物語だもん。


ひとたび捉え方を変えれば、過去は書き変わる。
一人の人生から、似ても似つかぬ別の物語が生まれる。
都合のいい出来事を選べとり
都合の悪い出来事を削除し
あたかも過去にそう思っていたかのような認識を付加することで
私たちは、何度も生まれ変わる。


あなたは何度も生まれ変わる。
そして、いつだって新しい生を歩みはじめることができる。


そして未だ見ぬ人間を愛する。
実態のない夢を追う。


勝手で歪な創作物の集合体
それが世界だ。