ガラクタについて

ワープ!! コンビニからコンビニへ、上昇気流に飛び乗って。ルートは虹のアーチよろしく雲を越える。神様の視点から見る都市は、ゾウの肌にとても似ている。
ブラックボックスが無数に立ち並ぶ新宿にダイブする。徐々に腐りゆくもの、蒸発するもの、ふやけて膨張するもの。何ひとつ正常ではなく、それこそが全体として正常な証である。
正常について。
このままじゃ神様にされちまう、伯父は言った。だから逃げなければならないのだと。
「神様ってなに?」幼い僕は聞いた。
「神様ってのはな!」伯父は無駄に語気が荒かった。
「太陽を、持ってるっちゅーことだ!」
彼は正常ではないと、世間に判断される。カメラのシャットアウトされた精神病院に送り込まれ、物語から消える。
だが、僕の記憶には残りつづけた。彼の意見が正常だったことは、20年後に証明される。
かつてふたつの太陽がこの国を照らし、神は地に降りた。その後、太陽の存在を忘れた人々は、自衛のための核所有を議論するようになる。そのときにはすでに、伯父の存在は忘れ去られている。今も病院で酒を飲みつづけているに違いない。税金を使って。
列島を丸ごと、虹色のバリアで覆えばいいと、伯父はいつも言っていた。
「そうすれば、太陽などガラクタだ!」
技術的な問題を別にすれば、彼の意見には概ね賛成である。ただ、完全無欠なバリアが各国を覆い、結果として兵器の全てが放棄されたそのとき…虹色に輝くそれはガラクタ以外の何ものでもない。ただのガラクタだって構わない。
ラクタについて。
(以下、同じ思考が繰り返される)