架空の国Nについて考察

年に一度だけ、一週間だけ、カーニバルが開かれます。
国中から人が集まり、カバもウサギもアンドロイドだって集まり
みなが、浮かれ、踊り、踊るのです。


アンドロイドは本来、祭りのようなものを好みません。
タカが外れるからこそ、面白いのが祭りですが
アンドロイドの『タカ』は、政府によって厳重に管理されているのです。
これはアンドロイドが、人間を殺せるように作られていてはならない、という
遥か昔に考えだされた倫理感を守るための処置です。
人間とアンドロイドに同等の権利が与えられている今
これは重大な人権損害なのですが
このことがさほど問題にならないのは
アンドロイドたち自身が、このシステムに誇りを持っているからです。
これはひとえに、教育の賜物です。


さて、カーニバルですが
会場ではこの期間だけ、タカが外されます。
行動パターンプログラムのロックを外すキーとなる図版が配布され
それ自体はもちろん、デジタルな複製の全ても
会場から外に漏れないよう、監視されます。
来場者は、カーニバルの期間中、外に出ることができません。
カーニバルが終わると、アンドロイドがもともと持っている機能によって
データのロックがかかります。
だからカーニバルは、年が切り替わる直前に終わります。
来年以降のキー図版は、政府によって厳重に保管されています…30年先の分まで。
それより未来のことは、みんな考えないようにしています。


カンのいい方ならお気付きかもしれません。
カーニバルは暴力に満ちています。
年々激しさを増しているため、最近では
赤い血の海(アンドロイドも、血は赤いのです)がみられることも
めずらしくなくなりました。


ただし、興味深い話があります。
カーニバルでの暴力行為は、罪に数えられないので
正確な統計をとっている人はいないのですが
この期間中、暴力行為を働くのは
ほとんどが『人間』だそうです。