ep.1 エターナルサンシャイン

誤解を恐れず、おおざっぱに言うのなら
この映画は『記憶を旅する』映画です。
制作者に言わせるとラブストーリーらしいですが
僕の(も)敬愛するミシェルゴンドリー監督の
映像に対する姿勢が、この映画を
ラブストーリーから遠ざけてしまっています。


という印象を受けたのにも関わらず
ふたつのラストシーンで、ラブストーリーとして感動させられました。


ひとつは(あ、ネタバレです)海辺の家の中。
恋人との記憶を消し去ってしまう、そのラストシーン
崩れ落ちる家(崩れ落ちる記憶の暗喩)の中で
出会いの記憶が再生されます。


記憶通りに、途中で逃げ帰ろうとするジョエル(という名の主人公)
それをクレメンタイン(という名のヒロイン)が呼び止めて、言います。
「今度は帰らないでよ」
「僕はここで帰ったんだ。記憶はここでおしまいだよ」とジョエル。
「サヨナラくらい、言ったことにしましょう」と、クレメンタイン。
そして、抱き合いながら彼女は
記憶を失ったあとで、再び出会う『約束の場所の名』を囁くのです。


もうひとつは
再び出会ったばかりのふたりが
過去に吹き込んだ相手のことを揶揄するカセットテープを聞く、というシーン。
「彼女とのセックスは、もの悲しいんだ」というテープをバックに
「そんなことはないよ」と、記憶にない自分の言い訳をする男。
久々に見た、素敵なラブシーンでしたよ。


という素敵なシーンがたくさん詰まっているのにも関わらず
ラブストーリーとして薄いのが残念。
そのラブストーリーを濃くしたら
映像の中を駆け回るマジックは、もっともっと少なくなっていただろうし
それはそれで残念な気はするんだけど
でも! 二人の物語を、もう少し考えて作っても良かったんじゃないか。
それが、とても惜しい。というか、悔しい。