シーツに潜る

どうしようもなく落ち込んだとき
あたしは、シーツに潜る。
そしてゆっくり服を脱ぐ。
真上からシーツを捉えてる
カメラを想像しながら。


本当に落ち込んだときって
それを誰とも共感できないもので
わかる、すんごくわかると
話を聞いてくれる素敵な友達も
よく観察すると
何にも分かっちゃいないんだって
すぐに気づいてしまう。


何より先にスカートを脱いで
それからショーツも取ってしまう。
いま刺されたら死ぬなぁと思う。
もちろん服を脱がなくたって
刺されれば死ぬことにかわりはないけれど。


あたしの落ち込みなんて些細なものです。
それは十分によく分かってる。
そもそものあたしが
とても恵まれてるってことも。
でも、いまこの瞬間のあたしにとっては
一大事なんだ。
そして、いまこの瞬間のあたししか
ここにはいない。
そもそものあたし、なんてものは
この世界に、存在しない。


テレビの音が聞こえる。
NHKの、自然を紹介するような
ゆるい番組だ。
サハラ砂漠の真ん中には、古くから
ベッドがひとつ、置かれています。
そのシーツの下では、ひとりの女性が
少しずつ服を脱いでいっています。


ブラを取る。それからセーターも。
上から見たシーツの起伏を
ゆっくりと、目でなぞる。
肩とか、おしりとか。


宇宙人って
ほんとにいるのかな?


裸になってしまうと
なんだかばかばかしくなって
たいていの場合
そのまま寝てしまう。


でもときどき
気持ちに高ぶりが治まらないことがあって
そんなとき
そっとシーツを取ると


あたしはサハラ砂漠にたどり着く。




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