緑の丘、そよぐ風と暖かい太陽の下
白い服を着た少女が空を見つめている。
さよなら、スペースシップ。


夜を描くのはもうやめようと
小説家は、考える。


少年は深い海の底から
少女の無事を祈っている。
スペースシップに乗って、ここではない
どこかへと去ってしまった小説家に
全てを託したのだ。


その3日前、小説家は
新宿のバーで美しい女性と飲んでいた。


スーツを着た男が街中で
ギターを掻き鳴らしている。
小さなアンプと、常識的な音量。


少女は3日後に飲むこととなる
青いカプセルの触感を
ただただ、想像していた。


スペースシップはインベーダーに爆破され
粉微塵となった。
明るい未来を想像することの困難さを
小説家は、実感した。


なんにもない、という言葉が
頭をよぎった。


クレープを食べたい、と
女が言う。


電車はまだ遠い。

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sshimoda