物づくり

たとえば4人が協力して一枚の絵を描くとします。
ひとりが紙を買ってくる。ひとりが線を描く。
また別の人が色を塗って、紙を買ってきた人が額に入れ
最後の一人が、どこに飾るかを考えます。


自由気ままにやっているうちはそれで良かったのですが
やがて知名度が高くなり、金を稼ぐようになり、この4人組は
〆切に追われるようになります。


1週間で一枚を仕上げねばならない。
じゃあ、はじめの1日は紙を買ってきます。
3日かけて、線を描いてください。
あとは2日で色を塗ってくれれば、最後の一日で
僕がどこに売るかを考えます。
その間に額に入れておいてください。


そんな話し合いをしてしばらくは
うまいこと仕事を続けていったのですが
だんだん4人の仲が険悪になってくる。


俺は3日で線画を終わらせた。色塗りが遅れようが関係ない。
いや、線画に直しがあったから、2日で色は塗れません。
そもそも紙を買ってくるだけの奴、仕事少なすぎるんじゃないか?


それぞれの人間が、それぞれの仕事に誇りを持っているし
責任感という意味でいったら、皆が高いレベルの意識を保っている。
でもいつのまにやら、目的が「絵を描くこと」でなく
「個々の仕事を完遂すること」に、変わってしまったのですね。


最近仕事をしながら、このように感じてばかりいます。
発注、納期、納品などという言葉が
仲間内で平然と使われていることに
僕は、危機感を抱いています。