エレファントを見て

久しぶりに映画を見てワクワクして
そんでネットに書き込まれた感想を
いくつか読んでみました。


自然な風景が撮られている…
淡々としているのに衝撃が…
日常のワンシーンのように描かれる事件…
といった感想が目につきました。
こういった書かれ方をしていること自体
この映画が成功していることを物語っているのでしょう。


綿密に計算された映画だと思います。


別の視点で同じ時間を何度も上塗りすることで
見ている人は、現在校内のどこを歩いているのか
誰が何をしている時間なのか
否が応でも推理しながら見てしまいます。
(また、それを無意識に強要する編集がなされています)


二度三度と同じシーンを別のアングルで見ることで
また、現在並行して起こっている出来事を
見ている人に頭の中でなぞらせることで
この学校が立体的に立ち上がってきます。


見ている人にとって、見方は違うと思います。
例えば、あの子かわいいと思いながら名もない生徒を見たり
人と人との関係を深読みしたり
自分をかっこいいという声を背中で聞く感覚を懐かしがったり
女の子同士の会話と自分の過去を重ねたり
とにかく、いろんな見方ができるんです。


でも、この学校の風景が立体的に立ち上がってくるという点では
見ている人すべてが同じ体験をしています。




すべてのカットに意図がある映画は
見ていて迷わないですし、気持ちがいいですし
間違いなく楽しめます。


でも、すべてのカットに意図はなく
別のところに意図があるこういう映画も
映画として成り立つんだというのに、新鮮な驚きを感じました。


グランドホテル方式の、緻密さ以外の部分を
無理やりそぎ落としたような撮り方。


題材がよかった。
これ以上の目的を必要としない
いい題材でした。