忘れてはいけないこと

尋ねた僕に、商売道具だと答えたこと。
作られた穴が鋭気で裂かれたというより
鈍器で突かれたようで悲しかったこと。
平然な顔をしていた僕に不満げだった彼女が
少しは驚いて欲しかったんだってこと。


もう、これから先
会うことなどないであろう彼女を
彼女の記憶を
僕の脳が整理するときに
こんなにも歪な形にしてまで
押しとどめようとした、ってこと。