ベクトルを複数持つ

マリオというゲームが本来持っている
請求力のベクトルに対して
あのCMのベクトルが大きく異なっていることに驚く。


ある一面からは、マリオを昔も楽しんだし
今やっても楽しめる、というゲーム好きの人たちには
強く訴える必要すらないという
自信の表れを感じ取れる。


だが、角度を変えて見ることで
巧みなベクトルのすり替えが見えてこないだろうか。


あのCMは、前提条件を覆した上で成り立っている。
まるで、昔のマリオが、誰にでもできる簡単なゲームだったかのように
しゃあしゃあと宣伝しているのだ。


そもそも、マリオは難しかったのだ。
よく思い出してほしい。
あの超絶技巧を要求する、ミスの許されないステージ群を。
あの思い出があるからこそ
ハードゲーマーはマリオを心待ちにしているし
同時にCMによって、普段ゲームをやらない人たちにも
ちょっとやってみようかと思わせている。
どちらかを騙している。


もちろん、全ての前提として
あの普遍性ある感触の良さが物を言っている。
つまり、基本さえ押さえておけば
どんな層にだってアピールできるということか。


加えて、CMのシチュエーションも秀逸です。
お湯が沸いたら中断できるような
あのスタイルこそ、携帯ゲーム機の
最も大きな売りを、端的に表しているんですよね。