映画草稿

sshimoda2005-06-11


朝起きて、顔を洗って
歯を磨きながら、今日着ていく服について
ずっと迷っていました。


先週買った可愛いスカートは捨てがたいけど
あんまり気合い入れちゃうと、本気っぽすぎるかなあ。
かといって、ジーンズっていうのも色気がないし…。


困ったので、ドラえもんに聞いてみることにしました。


(目を閉じて、ページを開き
 パッと目を開く)


しずかちゃんのスカートが目に入ったので
スカートを着ていくことにしました。


今まで、これで失敗したことはありません。
いつから始めたことなのか、全く覚えていませんが
このマンガを買ってもらったのは、まだ私が小さい頃で
買った書店は、ずいぶん昔につぶれてしまいました。


私の中に残っている、一番古い記憶は
スネ夫の「やっちゃえやっちゃえ」という
のび太をいじめるセリフに励まされて
隣のクラスの、好きだった男の子に、キスをしたことです。
小学校5年生の頃でした。
でも、そのときには既に、ドラえもんを信頼していたってことなので
私のドラえもん歴は、もっと昔から続いていたんでしょう。




(中略。彼女は、男の子とデートします)




帰り際になって、結局彼は
私の気持ちの気づいたのか気づかないのか。
じゃあ、また機会があったら、なぁんて言って手を振ります。
どうしたらいいのか分からなかった私は
ちょっと待ってて、トイレに行きたいの、そう言って
その場を離れました。


木陰に隠れて
さあドラえもん、私に力をちょうだい。
バックから取り出した本を、力一杯めくりました。


(なにやら、くっついているページがある
 剥がすと、一ページ破かれている。
 女の子の顔に、カメラアップ)


(病院。
 幼い女の子がベッドに向かって話しかけている。
 ねえ、バービーちゃん買ってくれるって約束したじゃない。
 手には、何か別のモノが握られているようだ。
 ね、やめなさい。お母さんが顔を覗かせる。
 画面外から、咳の音が響く。


 時間が飛んで、再び病院。
 お母さんの声が聞こえる。いい? おじいちゃんはもういないの。
 泣いている、女の子。
 手に持ったドラえもんを開く。
 ドラえもんが、のび太くんに言っている。
 たまには自分で考えたらいいのに。


 女の子は、そのページを力強く破く)


(時間は戻って
 破けたドラえもんのページを
 見つめている女の子。
 男の子の所へ走り寄って
 耳打ちをする。
 男の子は顔を赤らめる。
 ブラックアウト)


次の日、ドラえもんの本を探してみたけれど
見つかりませんでした。
部屋の中に落ちていないということは
昨日どこかに忘れてきてしまったのでしょう。
でも、私は、私の中にあるドラえもん
いつでもめくることができます。


(インサート、破れたページ)


だから
ありがとう、ドラえもん
わたしはこれからも、あなたに言われたとおりに
頑張っていこうかと思ってる。