踊れ

sshimoda2005-03-09

仕事に遅刻する。
気まずい思いでカードを切り
目立たないようにブースの席に着く。


PCの電源が入る低い音が
周りに響かないかと、気になる。
一日で一番、聞きたくない音だ。
だから、煙草を吸いにいく。
逃げるように、席を立つ。


喫煙室の匂いに落ち着きを取り戻し
誰か知り合いがいたのなら、話をする。
今日は朝から仕事をしていました、という
顔を、つくる。
つくりすぎて、頬が固くなる。
もはや慢性化した痛みだ。


ブースに戻っても、今ある仕事は
データの打ち込みしかない。
フォトショップから拾ったレイヤーを
ただただ、数値化してゆく。
この手で、数値化してゆく。
こんな仕事は、数字がやればいい。


悲しいのは、自分が今ここにいる意味が
人として、無いということ。
だから、自分を遠ざける。
なるべく自分が見えないところへ
自分を飛ばす。
そして、そのときの僕は、映像の海を浮遊している。


今日の主役は、トーコちゃんだった。
ダフトパンクのアラウンドザワールドを背に
彼女が踊っていた。
やがて舞台は新宿駅に変わり
迫り来る電車の風を避け
周りの人を巻き込み
彼女は踊り続けていた。
ワインの空瓶を耳に当て、空気を切り裂きながら。


Tの字の片側がない、シルエットが踊る。
その絵が撮れたのなら
もし撮れたのなら、そのとき
僕のテンキーを打つ、作業ビートも
少しは美しい物になってくれるのではないかと
まあ…
夢みたいな妄想をしているのだ。




クラムボン。スピード感がでてきて、よい。